memory...

 −13−

 
 
 
 
 
 
 
 
 
日もすっかり暮れ、辺りは静けさに包まれている。
 
現在街中のドライブウェイを走行中。
先ほどの森を離れ、モンドの運転する車は少しずつだが順調に本部への道をひたはしる――。
 
 
「・・しかし、モンドよく助けにきてくれたニャあ。」
 
「あ・・はい!本部でお二人を見かけたとき、ムサシ先輩がニャースさんをひきづっていくのを見て、これはただごとじゃないなって思ったんですよ!
なので、車でついていったら、案の定すごいことになっていたので・・・。」
 
「さっすがモンドニャ!
モンドがいなかったら、ニャーたちは今頃大変なことになってたのニャ」
 
今回、何度モンドに助けられたことか・・。
色々あったけど、モンドがいてくれて本当に良かったわ。
 
 
「・・・それにしても、とんでもない3ヶ月だったわね。」
 
「まったくだニャ・・・。
色々ありすぎて胃に穴があきそうなのニャ。」
 
「あのヤマトに命令されるなんて、人生で一番不愉快な任務だったわ。」
 
「・・・それはそこまでの事でもないの二ャ・・。」
 
「お前らって苦労してるんだなー。」
 
 
 
・・・・・ブチッ
 
 
 
 
 
 
「・・・・・全部おみゃーのせいニ"ャーーーー!!!!」
 
 
 
 
 
相変わらず騒がしい車内。
さわやかな夜風に美しいネオンが作り出すムードも、そこでは何の効果もなかった。
 
「・・・でも、やっぱりこの3人でロケット団なんですね!!」
 
モンドったら、本当に嬉しそう。
 
「コジロウ先輩が帰ってきてくれて、僕は本当に嬉しいです。話を聞いたときは、心配で心配で・・。でも、またこうして尊敬する3人が揃って見られるなんて・・・・うっ・・。」
 
「え・・・そんな泣くようなことなの・・?」
 
「あんたはなーんも知らないもんね・・・。」
 
「いっとくけど、一番大変だったのはおみゃーなのニャ、コジロウ。」
 
「俺?」
 
「・・・あんたはね、あの許婚のせいでひどい目にあったのよ!
第一、このロケット団であった色んな思い出を忘れちゃったのだって、あいつのせいなんだから。」
 
「・・・・。」
 
「そもそも、あの公園で・・・」
 
「いーよもう。」
 
 
 
「・・・え?」
 
「どうせ、過ぎたことなんだし。
その・・お前達に色々迷惑かけたのは悪かったな。」
 
「・・・・コジロウ・・。」
 
「今までの思い出がないのは残念だけど・・・、
何か俺・・ムサシとニャースとだったら、この先も絶対うまくやってけると思うんだよなあ。
記憶なんてないけど、全然初めて会った気がしないしさ!」
 
 
「・・・・・。」
 
「お金持ちの暮らしなんて、毎日本当に苦痛だった。
なんか、俺に合ってないっていうか・・・もっと自由にのびのびやりたかったんだ。
ロケット団て悪の犯罪組織らしいけど、昔の俺はうまくやってたんだろ?」
 
「まあ、それニャりには・・。」
 
「悪を極めるってのも、悪くないかもなw
色んなとこ旅して、色んなポケモンひっ捕まえて・・・。
ついでに世界中の王冠もゲットしたりなんかしちゃってぇ〜。」
 
 
何か勝手に妄想が始まったわ。
それにやっぱその変な趣味は健在なのね・・。
 
 
 
 
・・・・・でも、
 
 
 
 
 
 
 
「コジロウ、」
 
 
「・・ん?」
 
 
 
 
「愛と真実の悪を貫く、ラブリーチャーミーなロケット団として・・・・・・
 
 
・・・これからも、よろしく。」
 
 
「・・・・・・・。
・・・あぁ!」
 
「ニャーたちは、3人でロケット団なのニャ!」
 
 
 
 
 
笑顔で、重ね合わせた3つの手――。
 
 
 
 
 
 
 
 
記憶がないから何だっていうの。
 
あいつは何にも変わってない、これまでと全く同じ。
 
思い出なんて、これからいくらでも作れるんだから。
 
私やニャースの記憶がなくなったって、きっと同じこと。
 
これからも、
きっとどんなことがあったって、
こうやって乗り越えていける。
私達3人なら。
 
根拠なんてないけど、確信がある。
 
 
 
 
いつだって前向きでいればね!!
 
 
 
 
 
 
 
 
「うっ・・うわーーーーん!!!」
 
「え・・モンド?」
 
「感動しましたっっ!!それでこそ、僕の尊敬する先輩方です!!!!僕は今っ・・猛烈に感動しています!!!!」
 
「わっ・・ちょっと!モンド!
前見て前ーーーー!!!」
 
涙で視界を失ったモンドの運転は、あらぬ方向へ。
あっちこっちとカーブをかける。
ふと、目の前に木造の一軒家が・・・。
 
 
キイィィィィィイイイイイイ!!!
 
 
「やっ・・ちょっと・・!!!
ぶーつーかーるーーーーーー!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ガーーーーーーーーーン!!!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ブレーキを切ったのもむなしく、正面から激突。
車は勢いを落とすも、室内まで思いっきり突っ込む。
室内にあったダイニングテーブルは壁に吹き飛び、窓は大破。
只今おこなわれていたであろうディナータイムは一瞬でめちゃくちゃになった。
 
「あ・・す・・・すいませ・・。」
 
「ロケット団!!!!!!!」
 
 
 
 
 
「え・・・・」
 
 
 
 
 
室内からはやや懐かしい、聞きなれた声。
そしてあの、黄色いポケモン。
 
「ジャ・・ジャリボーイ・・・!?」
 
「お前ら・・・しばらく見ないと思ったら、いきなり突っ込んでくるなんて・・・!
しかもご飯までめちゃくちゃにしやがったな・・!!!!!!
 
ピカチュウ!!」
 
「ピッ」
 
 
「ゃ・・あの・・今回はちがっ・・」
 
「かみなりだ!!」
 
「ピィカァーーーーー・・・」
 
「ひっ・・・・」
 
 
 
 
 
「ジュゥウウウウウウウウウウ"−−−−−!!!」
 
 
 
 
 
 
ビリビリビリビリビリビリ
 
「ぎゃぁああああgつgんヴぃlhvtkh※@▽〜〜
 
 
 
ドカーーーーーーーーーーーン!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
「やな感じぃいいいいいいいいいい」
 
 
 
 
ピカーン・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
ピクッ・・ピク・・
 
「か・・くっ・・・な・・何とか助かった・・」
 
4人が落ちたのは、どこかのとある公園の噴水の中。
 
「まさか・・あんな所でジャリボーイに会うとは・・。」
 
「とんでもない目にあったのニャ・・」
 
「す・・すみません!!僕の不注意で・・」
 
 
 
 
 
「・・・・・・・。」
 
 
「コジロウ・・?大丈夫ニャ?」
 
 
 
「・・・・・・・・・・。」
 
 
 
「ちょっと!しっかりしなさいよ」
 
 
 
「・・・・・・・ムサシ、ニャース」
 
 
「生きてたニャ・・・。」
 
 
 
 
「・・・・・・出した。」
 
「・・・は?何?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・・思い出した。全て・・」
 
 
「えっ・・・・!?」
 
 
 
 
・・・・・
 
 
 
 
 
 
ピカチュウの電撃・・・。
ものすごい威力だった。
一瞬で頭がスパーク。
 
まじで昇天しそうな衝撃の中、
突如一気に流れこんできた・・・・・・
 
 
 
 
 
 
これまでの記憶。
 
 
 
激流のように、ものすごいスピードで俺の脳内を駆け巡る。
 
ロケット団特別訓練所、
ピカチュウに初めて出会った日、
コイキング売りのいかさま親父、
ポケモンコンテスト、
プラズマ団との激闘・・・・
 
 
マタドガス、ウツボット、サボネア、
チリーン、マネネ、マスキッパ、
デスマス、モロバレル、マーイーカ・・・・。
 
ジャリボーイにジャリガール。
もちろんモンドも。
 
そして――、
 
 
 
 
 
 
ムサシとニャース。
 
 
 
 
 
 
――――!!!
 
 
 
 
 
 
・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・全部、思い出したんだ・・・。」
 
「コジロウ・・・!!!!」
 
「ニャ・・ニャーたちと出会ったのはどこニャ・・?」
 
「・・・ロケット団特別訓練所だろ?
最後に赤いカビゴンを捕まえようとして、ぎりぎりタイムアップになって・・・。」
 
 
「・・・・・・コジロウーーー!!!!!!」
 
「よかっだニャあああああ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
キセキって、本当にあるんだな。
 
 
 
嬉しくて嬉しくて、
 
涙がとまらない。
 
3人で思いっきり抱き合った。
 
 
自分の宝物。
みんなとの大切な思い出が、戻ってきた・・・!
 
 
 
 
もういい大人が、わんわん泣きながら抱き合っている―。
そんな微笑ましい光景を、モンドはしばらく優しい目で見守っていた。
 
 
 
 
・・・「あ、せんぱい!」
 
「どうしたニャ?」
 
「ここ・・本部の目の前ですよ!
ほら、この公園・・・。」
 
「あ!本当ニャ!!」
 
目の前には、見慣れた巨大な建物。
われらがロケット団本部だった。
 
 
 
 
「・・・今回だけはピカチュウに感謝ね。」
 
「ニャあ!コジロウの記憶も戻ったし、本部まで帰ってこれたしニャ!」
 
「あぁ、ジャリボーイさまさまだぜ!」
 
すでに時間は9時をまわっていた。
急ぎ足でゲートへ向かう。
 
「IDをお願いします。」
 
「どうぞ。」
 
「・・・あ・・。
俺・・・そういえばID返却しちゃったんだ・・。」
 
そうか、コジロウは既に退団してるから、IDを持っていないのだ。
これじゃ中に入れない・・・。
 
「とりあえずサカキさまに・・・」
 
「でも・・この時間だぞ。」
 
 
う・・・どうすれば・・
 
 
 
 
 
 
 
 
「どうかしたか。」
 
 
 
・・・!!!!!
 
「サ・・・サカキさま!!
どうしてここに・・・。」
 
なんと、すぐ後ろにはまさかのボス・サカキが立っていた。
近くには愛猫・ペルシアンと、幹部2名、それから秘書らしき女が勢ぞろい。
そのはるか上空には、ここまで来るのに利用したであろう大型の巨大ヘリが飛び去っていくのが見える。
 
「サカキさま、この者がIDを所持していないため、ひき止めていたところでございます。」
 
「うっ・・・」
 
「・・・。」
 
 
 
 
 
「サ・・・・サカキさま!
一度退団した身ではありますが・・・・
 
俺を・・・この私をもう一度ロケット団に入れてください!!!!!!!
 
お願いします!!!!」
 
 
まさかのボスへ直々の入団申し込み。
もう・・こうするしかない・・!
 
 
ありったけの誠意で、サカキを目の前に土下座。
周りの奴らがドン引きしているのが見えた。
けど、俺にはここしかない。
 
 
 
 
 
 
俺の居場所はロケット団だけ――。
 
 
 
 
 
そばにいたニャース・ムサシ・モンドもまた、深々と頭を下げた。
 
「・・・・・・・・もういい。」
 
「へ・・・。」
 
 
「頭を上げろ。」
 
 
 
 
サカキさま・・・・。
 
 
 
「・・・前門の修復は終えた。
新支部設立の準備は一区切りを迎えたが、いまだに人材不足は否定できない。
・・・それと、貴様らは未だ借金の返済も終えていない。」
 
「・・・・サカキさま・・。
それでは・・・」
 
「今回に限っては特別に通せ。
・・・・IDは明日発行させる。」
 
 
 
 
 
 
「・・・・・・!」
 
 
サカキは手身近にすますと、幹部らと供にさっさと奥の方へ消えていった。
 
 
 
「いやっほーい!!!」
 
「コジロウ!!やったわね!!」
 
「これで晴れてロケット団だニャ!!」
 
「コジロウせんぱい・・!また、改めてよろしくお願いします!!」
 
 
 
 
 
 
激動の3ヶ月。
最後にここを通った時は、本当に身を切るような思いだった。
 
 
でも今回は、前回のように一人なんかじゃない。
 
 
 
 
 
仲間と供にゲートを通過したコジロウは、とびきりの笑顔だった。
 
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