memory...

 −12−

 
 
 
 
 
 
 
 
森に着き、ニャース気球を手早く隠す。
別荘への道すじは大体把握していたため、到着するのに大した時間はかからなかった。
―約2ヶ月ぶりのこの森。
目の前に広がる大豪邸は、いっそう巨大に見える。
 
 
「・・・・さあ、乗り込むわよ。」
「・・・ニャあ。」
 
ムサシ同様ニャースもまた、怒りで燃えていた。
 
ここへ向かうさなか、
ムサシに一連の話は聞いた。
聞いたときは正直信じられなかった。
でも、そのどの説明も今の状況につじつまが合う。
 
 
 
・・・まさか、あの時のあの女が、
コジロウがおかしなことになった原因が、
 
全てあの許婚・ルミカによるものだったなんて――。
 
 
あまりに衝撃的な事実。
しかし、まんまと乗せられたこと、それにあのコジロウの苦労を思うと、怒りを抱かずにはいられなかった。
 
しかも、当の本人は何も知らない。
 
 
 
 
絶対許さないのニャ。
たとえ連れ戻すとはいかニャくとも、必ず真実を伝えてやるニャ・・・!
 
 
 
 
・・・・・
 
 
 
 
 
門の近くに歩みより、木の陰にひそむ。
二人が腰にかかえるのは、ロケット団の科学力がふんだんに詰まった特製バズーカ砲。
前門の上部には、おそらく同様に最先端技術であろう高感知センサーが休み無く周囲を監視している。
 
 
今回はこそこそ侵入するようなマネはしないわ。
 
下っ端ロケット団の底力、思い知らせてやる――。
 
 
銃器を持ち、標的を確認する。
重厚な正面ゲート、そして柵の上に備えられたセンサー。
準備は完ぺきだ。
 
"突撃ニャ!”
 
 
 
 
「「おい!お前たち!!」」
 
「ニャ・・?」
 
突然、背後の木の陰から声がした。
何でそんなところから・・・・。
 
「・・だれ・・?」
 
「「しー!・・いいから!こっち来い・・!」」
 
「ニャ、おみゃー・・」
 
 
その声の主とは・・・
 
 
 
「コ・・コジロウ!?」
 
なんと、コジロウ本人。
 
「「お前ら・・何でそんな物騒なもん持ってんだよ!」」
 
抱えたバズーカ砲を見て、思わず青ざめる。
 
「あ・・あんたこそ!何でこんなところに・・」
 
「「しー!!静かにしろ!!・・・見つかったらどうすんだ!」」
 
何がなんだか分からぬまま、コジロウに引っ張られ二人は森の奥へと連れて行かれた。
 
 
 
 
「よし・・。ここまでくれば大丈夫か。」
 
「・・??」
 
湖のほとり。
空気の澄んだ美しい場所だった。
とりあえず近くにあった石の上に腰かけ、状況を整理する。
 
「・・・で?さっきは一体何やってたんだ?」
 
「いやっ・・それは・・」
 
「お前達って・・前あの別荘に侵入した奴らだよな?
何でわざわざあんな事したんだよ」
 
う・・・。
いざ本人に聞かれると、何とも答えづらい。
 
「あ、あんたこそ、何で隠れたりしてたのよ?」
 
「・・・・・・・。
もしかして、お前らって・・・ムサシとニャースなのか」
 
「え・・・?」
 
 
コジロウの口からその言葉が出てくるなんて。
まさか・・・・
「・・・思い出したの?」
 
「いや・・・よくは知らないんだけど、
俺の手帳に書いてあったからさ。」
 
「・・・・・。」
 
がくっ・・。
何よ、ちょっと期待しちゃったじゃない。
そういえば、侵入した時に手帳出しっぱにしたままだったわね。
 
「その通り。私はロケット団のムサシ。こいつはニャース。
で、あんたを入れて3人でチームを組んでたのよ。」
 
「そうなのか・・・・。
悪いな・・。俺、昔の記憶がなくて」
 
「・・・・知ってるわよ。
それより、あんたに伝えたいことがあ・・」
 
「あのさ!!頼みがあるんだ!」
 
「?」
 
突然前かがみになるコジロウ。
なんか、かなり必死そうだ。
 
「俺のこと、連れてってくれよ!!
一緒に旅して来たんだろ?」
 
「・・・へ・・・・」
 
これには呆気に取られるしかなかった。
確かに、コジロウに真相を伝えるためにここへ来て、あわよくば取り戻そうと思っていた。
まさか、自分から言ってくるとは・・・
 
「俺、明日までにここから出たいんだ!
じゃないと、まじであのルミカと結婚しなきゃなんないんだよ!」
 
何でも、明日がコジロウと許婚であるルミカが正式に結婚する日らしい。
そして、同時にコジロウの実家である大財閥の会社の社長に就任し、大規模な記者会見を行う、と。
 
「もし結婚なんてしたら・・・俺の人生終わりだ・・。」
 
「・・・・・でも、この先一生安泰じゃない。」
 
「安泰どころか、一生地獄だろ!」
 
そんなのいやだぁー、と半泣きで訴える名家のお坊ちゃま。
・・・本当、根本は何も変わってないのね。
いくら私達とはいえ、覚えてもいない奴にここまで頼むなんて。
 
「・・・ロケット団に入ったら、休みなんてないわよ。
食事だって3食食べれるとは限らないし、アルバイトだってしなきゃなんない。
それに、しょっちゅう吹っ飛ばされるし・・・。
それでもいいってわけ?」
 
「え"・・・」
 
「まあ・・・・・その代わり」
 
「・・その代わり?」
 
「毎日が冒険だし、自由だけどね。」
 
 
 
ぱああああああああああ
 
 
 
・・・こいつ、分かりやすすぎ。それに単純。
コジロウの目は期待と喜びで満ち溢れていた。
どうやら、未知の冒険の日々にすっかり陶酔してるみたい。
ちらりと横を見ると、ニャースも苦笑いでこちらを見ていた。
 
・・・・決まりだわ。
 
 
「よし、じゃあ準備するわよ。
あんた、本当にいいのね?」
 
「いいに決まってるって!
ただ・・・果たしてうまく逃げられるか・・・。」
 
コジロウは今までも何度か逃走を図ったらしい。
しかし、お見通しとでもいうように簡単に捕まってしまったのだとか。
・・・そりゃあ、前科があるから当たり前よね。
それに相手は財力もあるし、簡単にはいかないわ。
 
だが、もし今日逃走に失敗すれば、結婚して記者会見をしなければならない。
何せただでさえ大財閥。もし世間に知れ渡れば、ロケット団に戻ることは絶望的だ。
 
さて、どうす・・・
 
「コジロウさまーーーー!」
 
 
すると、どこからともなく叫び声がする。
ついに捜索が始まったか・・!
 
「うわ・・きた・・!」
 
「早くっ行くわよ!!」
 
コジロウを引っ張り出し、3人はニャース気球を目指して走る。
 
 
 
 
確か・・ここからだとかなり東側のはずだわ・・。
 
ぱっと見た感じ、相手はかなりの大人数。
しかも空にはヘリまで。
どんだけ大がかりなのよ・・!
 
「ムサシ!隠れるニャ!」
 
あわてて草の陰に隠れる3人。
その真横を、大勢のスーツ姿の男達が駆けていく。
 
「・・どうやって逃げるんだ?」
 
「どうにもこうにも、走るしかないでしょ!
私達の気球があるところまで行くのよ。」
 
「へ・・気球?
相手はヘリ使ってくるんだぜ!?」
 
「ニャー達はいつも気球なのニャ」
 
とにかく、無我夢中で気球のある方角へ。
ひたすら走る、走る。
 
「もうすぐよ!!!」
 
「いたぞ!!コジロウさまだ!」
 
「はっ・・見つかった!」
 
 
ついにコジロウ捜索部隊が3人を突き止めた。
しかも、上空には2機のヘリ。
 
「ま・・まずいニャ。」
 
「コジロウさま!お戻りください・・!」
 
「嫌なこったーー!もうたくさんだ」
 
後ろからは30人はいようかという、大部隊。
そして銃と網の応酬。
上空からはレーザービーム。
 
「あっ・・あんたの家、殺す気なんじゃないの!?」
 
「あいつらは目的のためなら何でもするんだよ!!」
 
「ニ"ャ〜〜〜〜〜〜」
 
 
 
はぁ・・はぁ・・はぁ・・
 
もう何が何だか分からない。
ただだ前に向かって全力疾走するしかなかった。
しかし、気球はもう目の前だ。
 
よし・・このあたりならいけるわね・・!
 
「いけっハブネーク!!!」
 
「シャアアア」
 
 
ムサシのモンスターボールから勢いよく飛び出したのは、この日のために連れてきたハブネーク。
 
「黒い霧よ!」
 
「なっ・・・」
 
途端に視界が閉ざされる。
ロケット団お得意の撹乱戦法だ。
 
「早く!」
 
なぜか一緒になって行き場を見失っているコジロウを引きずり、気球に投げ込む。
そして、そのまま上空へ舞い上がった。
 
 
やったか・・・?
 
 
 
 
ピシューーン!
 
目にも止まらぬ速さで貫通する光のライン。
その瞬間、ゴンドラはひどい揺れに襲われ、あっという間に先ほどの森に墜落した。
 
 
 
シュウゥゥ・・・・
 
 
 
 
「・・あいたたた・・」
 
 
「本当にしつこいですわね、あなたたち」
 
ムサシと同じ真紅の髪。
鮮やかなピンクのドレスに、愛用の水色センス。
ついに現れたわね・・!
 
「一体何度コジロウさまを付け狙えば気がすむんだか・・」
 
「・・・!」
 
「明日は私達にとっても大事な日。
コジロウさまの将来をめちゃくちゃにするおつもりですの?」
 
「あんたにだけは言われたくないわよ!!」
 
「そうだニャ!
めちゃくちゃにしてるのはおみゃーだニャ!」
 
バッ
 
途端にハブネークがルミカめがけて突進する。
 
「ハブネーク!巻きつくよ!」
 
 
しかし、ルミカは見向きもしない。
 
「ヘルガー、ルミカさまをお守りするのだ!」
 
執事が繰り出したのはヘルガー。
ハブネークの動きを一瞬で読み、胴体に噛み付く。
あまりの威力に、なすすべがない。
明らかに、そこには大きなレベルの差が存在した。
 
「ハブネーク!!・・・っ・・戻れ!」
 
 
おのれ・・・・
 
 
「コジロウさまは、これから世界を牽引していく存在になるべきお方。
そのようなお方に、下らない悪事を働かせようというのです?」
 
「・・・ロケット団は、愛と真実の悪を貫く、崇高な組織よ。」
 
「・・・・・・。
飽きれてものも言えませんわ。
名家の御曹司が犯罪を犯すなんて、世間が許すわけがない・・。
コジロウさまが忌々しい悪の組織を忘れ去ったことも、神が悪からコジロウさまを救って下さったのですわ。」
 
「ふん・・・何が神よ。全部あんたの仕業でしょ。」
 
「・・・・!」
 
ルミカは目を細める。
しかし、ムサシの手に出された小さなビニール袋を見ると、途端に顔色を変えた。
 
「あら、これに見覚えがあるみたいね。」
 
「一体なんなのか、教えてほしいのニャ」
 
「・・・・っ・・そんなものは・・存じなくってよ」
 
明らかに動揺を隠しているルミカを尻目に、ムサシは水の入ったペットボトルを取り出し、その粉末を入れた。
 
「ほんと何のにおいもしないのね、これ。」
 
その瞬間、その水をルミカの口元めがけ思いっきり投げつけた。
 
 
 
「!!!!!!!!」
 
 
 
水は見事に口元ではじけ、その多くはルミカの喉を通りぬける。
 
「なっ・・・・い・・・いやあああああああ!!」
 
「ル・・ルミカさま!?」
 
執事があわててかけよるが、ルミカはバタバタと発狂して手のつけようがなかった。
 
「わ・・わたしの記憶がっ・・!!!!
わたしは・・ルミカよね・・そうよね!?そうよね執事!??」
 
「ル・・ルミカさま!?どうされましたか!?」
 
混乱し、意味不明な言動を繰り返す。
あまりに異様な光景に周りはただただ立ち尽くすしかなかった。
さすがのコジロウも動揺を隠せない。
 
「お・・おい、ムサシ・・。何したんだ・・?」
 
「何って・・・ただの砂糖水を飲ませただけよ。」
 
「砂糖水・・?」
 
 
「よかったわね、ただの砂糖水で。
あんた、これでコジロウの記憶を消したんでしょ?」
 
 
 
 
「・・・・・!!?」
 
 
 
 
 
 
 
「・・な・・なんだって・・?」
 
「くっ・・・・ハメましたわね・・!」
 
「おみゃーが勝手にハマったのニャ」
 
ルミカもついに堪忍袋の尾が切れたようだ。
ものすごい形相で二人を睨みつける。
 
「・・・ルミカ・・・どういうことだよ・・?」
 
 
自分じゃ手に負えないレベルで事が進んでいる・・・
コジロウには全く事情が理解できなかった。
しかし、一つ分かったこと。
記憶がないのは、ルミカのせい―――?
 
 
ここまで来るともはや弁解の試みは難しかった。
ルミカは目を閉じると、開き直ったように笑みを浮かべコジロウに目線を移す。
 
「これは全て・・・コジロウさまの未来のため。
ルミカはどんな手を使ってでも、コジロウさまを正しい道へ導かなければならない・・・その責任ゆえにですわ。
今までずっと現実から逃げて、ご自分の運命から目を背けていらっしゃったコジロウさまを、引き戻すためにもしょうがなかったことですのよ。」
 
「勝手なこと言ってんじゃないわよ!
全部自分のためでしょう・・!?」
 
「その通りニャ!
コジロウの奴がどれだけ辛い思いをしたか・・」
 
「悪の組織なんて、絶対にコジロウさまを不幸にするに決まっていますわ!
ルミカだけでなく、コジロウさまを大切に思っておられるご両親のためでもありますのよ。
名家のものは名家のために生きるべきですわ。」
 
「この・・・口へらずが・・・!」
 
 
 
 
 
「もう・・・いい加減にしろよ!!」
 
 
自分の存在なんてまるで無視な上、どんどん話が進んでいく・・・。
コジロウも限界だった。
 
「俺の人生は俺のものだろ!
何で記憶がないのかも分かんないし、覚えてないからどうでもいいけど、勝手に話を進めるなよ!」
 
「コジロウさま・・」
 
「ちょっと!コジロウ、どうでもよくなんてないでしょーよ!」
 
「そりゃあ最初は何でこうなっちゃったんだろう、とか思ったけど・・・もう無いものは無いんだし。
昔起こったことは手帳を見れば分かるんだから、そればっかり考えてられないだろ!
それに・・・俺はこれからもっと自由な人生を生きたいんだ!
名家だろうが何だろうが、関係あるかーーー!」
 
 
は・・・・。
 
 
叫びたいだけ叫んだかと思うと、すぐさま逃走。
 
「ちょ・・ちょっと!待ちなさいよ!!」
 
「どこ行くニャー!」
 
「あ・・コジロウさま!
皆さま、コジロウさまを追いかけて!!」
 
一瞬ずっこけてしまったが、体制を立て直し、コジロウを追いかける。
 
「いけっラフレシア!つるのムチ!」
 
ルミカはラフレシアを繰り出した。
つるのムチでコジロウを狙う。
 
「コジロウーあぶないニャ!!」
 
 
な・・やばっ・・
 
 
 
 
「マーイッカアアア」
 
 
「!!」
 
「ラ・・ラフレシア!」
 
間一髪、そこで飛び出したのはマーイーカ。
ニャースのバックから次々に飛び出すポケモン達。
 
「・・?なんだお前・・?」
 
 
「くっ・・・まだまだですわ。ラフレシア!つるのムチ!」
 
再び体制を立て直して攻撃。
今度はうまくマーイーカをとらえる。
 
「デース」
「キッパァ」
「マネマネー」
「バレー」
 
(こいつら・・・助けてくれてるのか?)
 
ラフレシアの猛攻撃に対抗する、5匹のポケモン達。
5対1ではさすがに不利だった。
たまらず後退するラフレシア。
 
「おみゃーらよくやったニャ!」
 
「やりますわね・・・!こうなったら・・・・」
 
 
 
はぁ・・はぁ・・
 
全力で森を駆け下りる。
しかし、既に気球は壊されてしまった。
どうすれば・・・
 
 
バーーーーン!!!!!
 
 
「な・・・なんだ!?」
 
「うえニャ!!」
 
今度はヘリから怒涛のレーザービームの嵐。
 
「あわわわわわわわわわ」
 
交互に入れ替わりながら、レーザービームを巧みによける3人。
 
やっぱり、こういう場面では息ぴったりね、私達・・!
 
うまくビームをよけるものの、それは前方まで伸びていき、正面の木に命中した。
 
ガガガガ・・・
 
「まずい・・倒れるニャ!!」
 
 
 
 
 
ドカーーーーン!!
 
 
 
「!!?」
 
 
 
 
な・・なんだ・・?
 
激しい爆撃音とともに、さきほど自分達を追跡していたヘリが煙を上げて落ちていくのが見えた。
 
ど・・どうなってるニャ・・
 
 
 
 
「ムサシせんぱーい!!ニャースさん!!!!」
 
 
「おみゃーは・・モンド!!!!」
 
なんと、目の前にはオープンカーに乗ったモンドの姿。
手にはニャース達と同じロケット団員愛用のバズーカ砲がにぎられていた。
 
「ニャ・・・来てくれたのかニャ!!!」
 
「せんぱい!!
その倒れた木から飛んで、そのまま車の中へ飛び込んでください!!!」
 
「なんですって・・!!?」
 
飛び込めといっても、ここから車までは10メートル以上の距離がある。
 
「む・・むりニャ!!!!」
 
「がんばってください!お願いします!!!」
 
「くっ・・やるしかないわ!!」
 
「お・・・・おう!」
 
 
ダン!!!
 
倒れてきた木の側面を力いっぱい蹴り上げ、宙を舞った。
 
 
 
(届け・・・!!)
 
 
 
 
しかし、どう考えても車まで飛距離がたりない。
このままでは無理だわ・・!
 
 
「マスキッパ!!!
つるのムチだ!あの車まで伸ばせ!!」
 
瞬時にのばしたつるのムチは、モンドの車と3人の体をしっかりと結びつける。
そして、そのまま車の中へ―――。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「な・・何とかこれたあ・・。」
 
「コジロウ、ナイス判断だニャ!」
 
「あ・・あぁ、何となくな!」
 
記憶がないコジロウにとって、今日初めて会ったマスキッパ。
でも、さっきは確かに息ぴったりだったわ。
マスキッパだけじゃない、他のポケモン達だって。
5匹のポケモンたちと仲良く抱き合うコジロウは、どう見ても立派な仲間だ。
 
「コジロウせんぱい!!!
よかったです、3人がご無事で・・・!!」
 
「モンド・・・よく来てくれたのニャ!!」
 
「本当いつも頼りになるわね!
・・・でも、何でわざわざさっきは木から飛べなんて・・・」
 
「それはですね・・・
 
 
 
「「「うわあああああ」」」
 
 
ドシーーーーーン!!
 
 
 
 
後方から、かなりどデカイ鈍い音。
 
振り返ると、大きな穴の中にうまい具合に納まった、大勢のコジロウ捜索部隊の姿が・・・
 
 
 
 
 
 
「なるほどね・・・。
あんた、やるじゃない!落とし穴なんて」
 
「はい!尊敬する先輩から受け継いだ技術ですから!!!」
 
「だから、あの道に降りちゃいけニャかったのかあ」
 
 
 
わいわいがやがや
 
 
 
何だかすごく安心する、この感じ。
俺が求めていたのは、これだった気がする―――。
 
 
 
「コジロウさまーーーーー!」
 
落とし穴から、ルミカの声。
 
「お待ちになってー!ルミカとのお約束はどうされますのおおおおお」
 
「そんなのナシよ!なーしなーし」
 
「ざまあみろニャ!」
 
勝ち誇った顔であっかんべーの二人。
穴から半身だけが確認できる、ぼろぼろのルミカの姿はだんだんと小さくなっていく。
 
 
 
 
 
 
 
「・・・何か知らないけど、いい感じぃ!」
 
しばらく身を置いた場所から離れていくにも関わらず、
コジロウの心の中はすがすがしかった。
 
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