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 −10−

 
 
 
 
 
 
 
 
久々にやってきた町は、何ら変わっていなかった。
 
まあ、一ヶ月で変わるわけはないが・・・・。
 
前回とは違い、今回はこちらから積極的にコジロウの許婚・ルミカの別荘を目指している。
 
 
「あ・・・あれよ!!」
 
 
さすが、大富豪の家はあまりにも目立ちすぎて、見つけるのは非常に簡単だった。
とりあえず森にニャース気球を止める。
 
「どうやってあの別荘に侵入するのニャ」
 
「とにかく!最初は様子を見に行くわよ!」
 
 
ルミカの別荘は近づくほど巨大になっていく。
これが実家ではなく別荘なのだから、驚きである。
 
「・・・・なんて厚い壁なのニャ」
 
「あの柵じゃ、よじ登って進入するのも無理があるわね。」
 
 
しかしここは大ベテランのロケット団。
簡単には諦めない。
 
「門の警備は・・・と・・。」
 
「ニャース!隠れて!!!!!」
 
ムサシが小声で叫び、勢いよくニャースを突っ伏した。
 
 
ブッ・・・・
 
「ニャにす・・・・」
 
そのニャースの前方を、二人の男女が歩いてきた。
見るからに高級そうなドレスとスーツを見にまとい、その近くには体格の良い執事と、ボディーガードらしき男が数人たっている。
 
「なんて空気の澄んだ美しい森・・。さすがルミカさんは良いところに目をお付けになりますわね・・!」
 
「うむ・・・。しかし我が息子が無事帰ってきて本当によかった。今日からは式に向けてのうち合わせもしなければな。」
 
 
「ニャース・・・あれはコジロウの両親よ・・」
 
「ニャあ・・。見覚えがあるニャ。」
 
「やっぱりコジロウはこの別荘の中にいるみたいね・・。」
 
 
コジロウがこの中にいるのはほぼ確信がついた。
しかし、問題は一体どのように進入するか・・だ。
 
 
 
ま、まずはオーソドックスから攻めるべきね。
といいつつ取り上げたのは・・・他でもないスコップ。
 
「さぁ、掘るニャ!!」
 
穴掘りにかんしては私達に並ぶものは恐らくいないだろう。
二人は驚異的なスピードで門の下を掘り進めていく。
やがて、庭の領域に入り込むことに成功した。
 
「ここを上がれば正面玄関の前に出るわ!」
 
「案外楽勝にゃ!!」
 
最後の土を堀り上げ、地上に飛び上がる。
 
 
よし、出た!
 
 
 
次の瞬間、柵の上に取り付けてあった高感知センサーが二人を捕らえ、八方からレーザービームが炸裂した。
 
 
 
「やな感じーーーー!」
 
 
 
 
 
穴掘り作戦、失敗。
 
 
 
 
 
 
ぐぬぬ・・まだまだ・・。
 
にょ・・・やっぱり大富豪のセキュリティは伊達じゃないニャ。
 
 
ビームでボロボロになった髪を整えながら、二人は次の作戦を考える。
 
「あのセンサーはかなり厄介だにゃ。あれがある限り、おそらく空からも地面からも侵入は難しいニャ。」
 
 
ぬぐぐぐぐ・・・・・。
 
 
すると、そこにこの別荘で働いているメイドらしき団体が歩いてきた。
 
 
「あれよ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・「只今戻りました。」
 
「IDはお持ちですね。
では、どうぞ。」
 
 
門番の許可を経て、メイドの団体は歩いていく。
 
 
「「・・・・よし、バレてないバレてない・・。」」
 
「「本当に大丈夫なのかニャ・・。」」
 
 
ムサシはメイドに変装し、一番最後尾についた。
ニャースをお腹のところに隠しているため、ややメタボな感じではあるが・・。
 
「「これで潜入成功ね・・・!」」
 
ムサシはやっと敷地内に足を踏み入れる。
 
 
 
 
ピーーーーーーーーー!
 
 
 
センサーの方から警報が鳴り響いた。
ムサシの足元に鋭い光が飛ぶ。
 
 
げ・・・なんで・・!
 
 
「何事だ!!」
 
門番が急いで走り寄ってきた。
メイド達はかなり混乱している。
 
「おい、そこのメイド、IDを見せろ。」
 
 
ID・・・?
そんなの持ってないわよ・・!
 
わかったニャ!
このセンサーはここに出入りする人が持っているIDを感知しているんだニャ・・!
 
 
「持ってないのか?お前・・何かあやしいな・・」
 
「何も怪しくありましぇーん!失礼しましたーーー!」
 
 
またレーザーに吹っ飛ばされないように、全速力でその場から立ち去った。
 
 
 
ハァ・・・ハァ・・・
 
 
「メイド作戦も失敗か・・。」
 
「IDがいるニャんて・・参ったニャぁ・・。」
 
このままでは潜入すら成功しない。
 
 
だからって、やすやす引き下がるもんですか・・・・!
 
 
「オーホッホッホッホ」
 
すると、前方に甲高い声で笑いながら一人の女と執事が通り過ぎていくのが見えた。
 
「にょ・・・あれはルミカにゃ!」
 
「あの女・・・!
あ・・・そうだ、いい考えを思いついたわ・・・!」
 
 
 
 
 
 
・・・
 
 
 
 
 
「ルミカ様・・・!
先ほど高級ネイルサロンに行かれたばかりですが・・
もう戻られたのですか・・?」
 
「いえ、ちょっと忘れ物をしたので戻ってきただけですわあ。」
 
「まさか・・ご自身で取りに戻られるとは・・。
すぐに門をお開け致します。」
 
「お願いいたしますわ!」
 
 
キィーーーー・・・
 
 
「あらやだ、わたくしIDを執事に預けたままでしたわ。ちょっと、あちらのセンサーを止めて頂けませんこと・・?」
 
「・・分かりました。すぐにお止めいたします。」
 
 
 
ムサシ・・・考えたニャ!
 
ニャーたちは変装に関しても超一流。
おまけにムサシはルミカとそっくりだから完璧なのニャ・・!
 
ちなみに、ニャースはドレスの中で、ムサシの足にしがみついていた。
 
 
ピッ・・・・
 
 
センサーが止められ、中へ入り込む。
 
 
テクテク・・・
 
 
「「ちょっとニャース!歩きづらいわよ!!」」
 
「「しょ・・しょうがないニャ!」」
 
「? ルミカさま、どうかされましたか・・?」
 
「あ・・いえいえいえ!なーんでもございませんわあ!オホホホホ」
 
 
ふぅ・・
 
何とか、屋敷の中に入ることに成功。
 
 
「お帰りなさいませ、ルミカさま」
 
入った途端、20人ほどの執事にメイドから一斉にご挨拶をうける。
 
・・しかし本当すごい屋敷ね・・。
 
外観もすごいが、中身も半端なかった。
突き抜けるほど高い天井。
長い長いレッドカーペットに、所々に飾られたど派手な花のオブジェ。
ルミカの趣味がよく出ていた。
 
「どうされましたか、ルミカさま。」
 
「ちょっと忘れものをしてしまったのですわ。お部屋に案内してくださる?」
 
「はい、ただいま。」
 
自分の部屋に案内しろ・・とも不思議な話だが、金持ちの中では何でも通じるようだ。
 
メイドに連れられ、二人はルミカの部屋へ向かう。
 
 
「ところでメイドさん、コジロウさまはどちらへ?」
 
さぁ、本題だ。
 
「コジロウさまでしたら、今はご両親さまとの面談中とお聞きしておりますが・・。」
 
「この屋敷にはいらっしゃるのかしら?」
 
「おそらく外出中かと・・。ですが、夕方までには帰ってこられると思います。」
 
・・・やっぱりここに帰ってくるのね。
 
「・・そう。わかりましたわ。
ちなみに、コジロウさまのお部屋はどちらですの?」
 
「はぁ・・コジロウさまのお部屋はこの上の階の一番右側のお部屋です。」
 
メイドはさすがに質問に違和感を感じてはいるが、やはりムサシの顔は瓜二つ。特に疑ってはいないようだ。
 
「ご苦労ですわ。この辺でよくってよ。」
 
「はい。失礼致します。」
 
 
 
・・・よし、うまくいったわね。
 
「このままコジロウの部屋に侵入して、待ち伏せ作戦だニャ。」
 
ニャースとムサシは急いで上の階へ向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・広」
 
まぁびっくり、コジロウの部屋はロケット団本部のラウンジほどの大きさ。
その割にはそんなに物がない。
まだ一週間しか住んでないんだから当たり前か・・。
 
ひとまずここでコジロウを待ち伏せることにした。
 
 
「ニャ・・。」
 
「どうしたのよニャース?」
 
ニャースが引き出しの中から見つけたのは一冊の手帳。
 
「これは・・・コジロウが使っていた手帳なのニャ。」
 
B6サイズくらいの小さな手帳だが、使い古しているのはよく分かった。
・・とりあえず、開けてみることに。
 
 
 
 
 
 
中身は、まあニャースが話してくれたこととほとんど同じだった。
 
一番ショックだったのは、この「疑問に思ったこと」というページ。
 
・捕獲装置の作り方
・一番最初に旅した街
・教官の名前
  ・
  ・
・どんなポケモンを持っていたのか
・なんでピカチュウを追っていたのか
・なんでここで働いているのか
・ロケット団とは何なのか
そして、「どうやってニャースとムサシに出会ったのか。」
 
確かに全てコジロウの字である。
 
 
・・なるほど。
確かに日に日に記憶がなくなっているようね。
さすが、あいつらしくこと細かに書いてあるわ。
 
そこにはその時の出来事や思ったことがズラリ。そして、最後の日の計画や何をしたかも全て記してあった。
しかし、最後の計画の後からはもう何も書かれていなかった。
この手帳のことも忘れたのか・・・。
 
ニャースは後半あたりから泣いてしまい、ほとんど読めていなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・ふう。
 
 
 
なんでこんなことになったのかしら。
 
何やら相当苦労したみたい。
別れる前の事を思い返しても、何一つ思い当たる節がない。
全てが謎すぎる。
 
ただ、離れている時にこんな事が起こってしまったのがくやしい。
 
いやでもずっとずっと一緒に旅してきた仲間だ。
 
こんな風に終わってしまうなんて。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・いや、終わらせなんてしない。
 
最後の最後までねばってやるわ・・・!
 
それが私のやり方。
 
「ニャース!泣いてるひまなんてないわよ。
出来るだけのことやってみましょ!
あいつだって、思い出すかもしれないじゃない。」
 
 
「・・・ムサシ・・。」
 
ムサシには一点の迷いもなかった。
 
 
 
 
 
・・・・
 
 
 
 
 
 
しかし・・・見ればみるほどでかい部屋ね。
あのオブジェ・・売ったらいくらになるかしら?
 
ムサシ・・・話がちがってくるニャ。
 
あのちっさい花瓶ぐらいは盗ってもバレないんじゃない?
 
ムサシ・・。
 
 
 
ガチャッ
 
 
「「!!」」
「「帰ってきたわね・・!」」
「「意外に早かったニャ」」
 
 
現れたのは、探し求めてきたあの青い髪。
 
「「行くニャ!「「待ちなさいニャース!!」」
 
ムサシはニャースを抱えると、すぐさまカーテンの裏に身をひそめた。
 
誰か他にも人がいる・・!
 
 
 
「だーかーら、何でこの年になって毎日ピアノの練習なんてしなきゃなんないんだよ。」
 
「コジロウ様、ピアノの一つもできないようでは、名家の跡取りとして一人前にはなれません。」
 
「ピアノ関係ないだろ!・・・もう勘弁してくれよぉ」
 
「芸術の心を理解することは大事なことでございます。2ヵ月後には会社をお継ぎになるのですから、今のうちから更なる教養を深めねばなりませんぞ。この後にも政治家の要人やその他著名人の方との面談、それから各種マナーのお勉強も全てこなして頂きますよ。」
 
「・・・・・・・・・・はぁ」
 
きっちりとスーツに身を包んだ英国紳士のような男は、どうやらピアノの講師のようだ。
 
 
 
 
 
・・・なによ、ちっとも変わってないじゃない。
 
久しぶりに見たコジロウは、何ら前と変わらなかった。ため息をついているその姿はマヌケそのもの。
唯一、身に着けてる服だけはどうみても上流階級のそれであった。
講師らしき男にずるずると引っぱられ、ピアノの前に座らされる。
 
 
「それではこちらの課題曲をどうぞ。」
 
「・・・・・はあ・・。」
 
ため息まじりに、無理矢理だがひきはじめる。
 
 
 
 
 
「・・・・・・・へぇー・・やるじゃない。」
 
「・・びっくりだにゃ。」
 
なんというか、普通に上手い。
昔はたくさん習い事してたとか言ってたけど、これ相当やらされてたわね。
 
こうしてピアノを弾くコジロウを見ると、まあ良い所の御曹司にしか見えないから不思議だ。
よく見ると顔もあの両親によく似てるし、少なくとも今の姿からはRマークのロケット団姿は想像できなかった。
 
ただ、どうみてもやる気なさそうだけど・・・
 
 
「・・・まぁいいでしょう。
しかしそんなに嫌々やっても美しい演奏はできませんよ?」
 
「別にしたくないっつーの!大体どこでこれ役に立つんだよ。」
 
「言葉遣いが悪いですね。もっと名家の跡継ぎである自覚を持たなければ・・。とにかく、30分間はきっちり練習して頂きますよ。」
 
「・・・・・はぁ。」
 
 
・・このままじゃ出ていけないわ。
 
仕方なく、ピアノの練習が終わるまで待つことにした。
 
 
 
 
 
 
 
「・・しかしおかしいのニャ。」
 
いやいやピアノをひくコジロウを見ながら、ニャースは眉間にしわをよせた。
 
「コジロウは確かに次々と記憶を失っていたはず。なのに、あんなにスラスラピアノが弾けるってことは、昔習っていたピアノのことは覚えているという事だニャ。」
 
「・・・確かに。」
 
「ニャーとコジロウが情報技術部で仕事をしていた時、コジロウは一回覚えたことも次には忘れていたのニャ。つまり・・・・
もうコジロウは記憶力が回復している可能性が高いニャ!」
 
ニャースの言うとおり、コジロウは記憶力を取り戻しているかもしれない。
 
だとすると・・・・
 
 
「まだ希望はあるニャ!」
 
 
 
俄然、やる気が湧いてきた。
コジロウにロケット団のことを思い出させれば、戻ってくるに違いない。
 
二人は体制を立て直し、タイミングを見計らった。
 
 
 
「・・ご苦労さまでした。今日のレッスンは終わりとします。10分後にはルミカ様を含めてのご面談がありますので準備をしておいで下さい。」
 
「・・・・・・・。」
 
 
 
ようやく、男は部屋を出ていった。
 
はあ・・・と、本日何回目かも分からないため息をつくと、ソファに座り込むコジロウ。
心底うんざりしているようだ。
 
 
 
・・・今がチャンスね!
 
 
 
「コジロウ!!!!」
 
 
男がドアを閉めた瞬間、
二人は勢いよくカーテンの裏から飛び出した。
 
 
 
 
 
 
 
「は・・・・・・ルミカ・・・・?」
 
 
 
 
 
 
あ・・忘れてた。
今ルミカだったんだわ私。
 
急いで服を脱ぎ捨てる。
 
 
「違うわよ!!ムサシよムサシ!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・・?」
 
コジロウは固まって動かない。
 
 
どうやら、突然のことで思考が追いつかないようだ。
 
「コジロウ!!私よ!」
 
「ニャースだニャ!分かるかニャ?」
 
勢いに任せてぶんぶん肩を揺さぶる。
 
「早く思い出しなさいよーーー!!!!」
 
 
「なっ・・・・だ・・だれかーーーーーーーーーーー!!」
 
コジロウは必死に叫んだ。
 
 
 
ガチャッ
 
 
「コジロウさま!大変です!ルミカさまの偽者が・・・・―――?」
 
 
 
そこにはコジロウに襲い掛かる、見たこともない女と猫のような生き物。
 
その横には変装に使ったルミカの衣装。
 
 
 
ま・・まずい・・。
 
 
 
「助けてくれ!なんか不審者が・・・。」
 
「ちょっと!不審者って何よ!!!ムサシとニャースでしょ!あんたの仲間じゃない!」
 
「そうだニャ!!!」
 
「おっ・・俺はお前達のことなんか知らないぞ・・!!」
 
「えっ・・・」
 
 
「取り押さえろ!!!」
 
数人の男が一気に駆け込んでくる。
 
「くっ・・つかまるもんですか!!」
 
 
 
バンッ
 
 
 
ムサシの目線を合図に、ニャースは地面に煙玉をたたきつけた。
コジロウの腕をひっつかみ、一気に窓ガラスを突き破る。
 
「!!!?」
 
「くっ・・・・まずい!犯人がコジロウさまを連れて逃走するぞ!!」
 
 
 
 
 
4階の高さからものすごいスピードで急降下。下には森が生い茂っている。
 
「ちょっ・・!やめろ!死ぬーーーーーーー!!!」
 
「大丈夫よ!あんた死なないから!!」
 
「あの木ニャ!」
 
比較的弾力性があると思われる木をめがけ、3人は一気に突っ込んだ。
 
 
 
 
 
あいたたたた・・・・
 
 
 
 
枝にひっかかり、木からぶら下がる。
何とか地面に激突せずにすんだ・・。
ほっと一息つき、ムサシとニャースは気絶寸前のコジロウを引きずり降ろした。
 
 
 
・・・・・
 
 
 
とんでもないことがおこった。
 
いきなり出てきた不審な女としゃべる猫に連れ去られて、しかも無理矢理窓から飛び降りさせられた。
しかも今はその二人組と一緒。
何がどうなってる・・・。
 
 
 
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・死ぬかと思った・・。」
 
生きてはいたが、着ていた高級素材の服は見事にボロボロ。
おまけに全身打撲だ。
 
「いきなり何すんだよぉ!!」
 
「いいじゃない、生きてんだから。」
 
「そうニャ。」
 
 
なんとも軽い返事に開いた口が塞がらない。
 
 
 
「・・・あんた、本当に何も覚えてないわけ?」
 
「・・・・・・・はあ?」
 
「・・・だめかニャ・・。」
 
「あんたと私とニャースはね、ロケット団で一緒に旅してたのよ!」
 
 
 
・・???
 
 
何言ってんだこいつら・・。
もうさっきからの言動といい、頭が狂ってるとしか思えない。
 
「だから・・・さっきも言ったけど、俺はお前たちと会ったのは初めてだ。それに、ロケット団て一体何なんだ?」
 
「悪の犯罪組織よ。私達はチームだったの。」
 
「・・・犯罪組織!?」
 
いや・・・ありえないだろ。
なんで俺が犯罪組織に?
 
 
「な・・何かの間違いだろ。」
 
「あんたはね、自由を求めてロケット団へ入ったのよ。大金持ちの窮屈な暮らしが嫌だって言ってね。」
 
「え・・。」
 
 
まあ・・それには一理あるかも。
今の生活には心底飽き飽きしている。
立派な家も服も食事もお金も、そして大財閥の御曹司という肩書きにも、全く価値を感じられない。
時々、全部投げ出したくなるし・・・。
 
「・・どうせあんた、過去の記憶ないんでしょ?」
 
「!」
 
「ニャーたちは全て知ってるのニャ。今は何か思い出せてるのかニャ?」
 
「・・・・・。
俺は・・・」
 
 
 
 
「コジロウさまを返してくださいますこと?」
 
 
 
 
「!!!!!」
 
 
 
ルミカ・・!
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
あの女・・!
 
ついに見つかったか・・・・
 
頭上を見上げると、ヘリコプターから降ろされたハシゴから、コジロウの許婚・ルミカ本人が現れた。
 
 
「誘拐はいけませんわ。」
 
「ゆ・・・誘拐じゃないわよ!連れ戻しにきただけじゃない!」
 
「おかしなことを・・。ここは現在コジロウさまのお家ですのよ?」
 
「何いってんのよ!コジロウはロケット団で、私のチームメイトよ。」
 
「ふふ・・。ロケット団はきっちりとお辞めになったはずでは?」
 
 
・・・・・・!
 
くっ・・・
 
 
「・・おいルミカ・・ロケット団って一体・・・」
 
「執事さん、コジロウさまを早く連れ戻して。」
 
「はい、ただいま。」
 
体格の良い執事が銃のようなものを発射したかと思うと、突如大きな網が飛び出しコジロウを捕らえる。
 
「うわっ・・」
 
「コジロウさま、早くこちらへ・・・!」
 
「させないニャ!!」
 
ニャースも負けじとコジロウの網をひっぱる
 
 
ググッ・・
 
 
「いでででで・・・・」
(たのむからもっと丁寧にあつかってくれ・・・)
 
両者譲らぬせめぎ合いが続く。
 
 
 
 
 
「・・・・あんなの無効よ!コジロウはたまたま状態が良くなかっただけで、ロケット団を辞めたいなんて思ってないわ!」
 
「あら・・コジロウさまはご自分からルミカのもとに帰ってきたのですわ。
それに・・コジロウ様は深刻な病気だったんですのよ?それをこのルミカが治してさしあげたのですわ」
 
 
病気・・・?
 
 
「・・どういうことよ?」
 
「申し上げたとおりですわ。・・・・・それに、記憶も残ってない今のコジロウさまがそちらへ戻られたところで、それが幸せだとは思えませんわ。」
 
「・・・・くっ・・・」
 
「もともと将来性のない悪の組織なんて、コジロウ様にはふさわしくない。
夢も希望も、それに見合った財力も・・・約束された未来がある、ルミカと供に生きるのが本当の幸せですわ。
分かったら、お引きとり願えませんこと?」
 
 
くっ・・・・本当にむかつく女だわ。
なのに・・すぐに言い返す言葉が見つからない・・。
 
「ラフレシア!その泥棒猫にしびれごなよ!」
 
 
しまった・・!
 
 
しかし一歩遅かった。
ルミカのラフレシアは網をひっぱるニャースに思いっき
りしびれごなを振り掛けた。
 
(ニャ・・・力が・・・)
 
 
「うわっ・・!」
 
思いっきり引っ張られて、コジロウは執事の方へ。
すぐさまヘリの中に通される。
 
「ちょっと!あんた待ちなさいよ!!」
 
「ニャ・・コジロウ・・!」
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・。」
 
(あいつら・・・一体何者なんだ。
何でここまで俺のこと・・・・?)
 
何か知らないが、どうしてもあの二人が気になる。
 
(とにかく、このままだと事態が悪化する。
こっちも相手にも危険だ。)
 
 
「・・・・おい、お前らさっさと帰れ!迷惑だ!」
 
 
 
「なっ・・!」
 
「・・・コジロウ・・」
 
 
「・・・そういうことですわ。
それでは。」
 
 
ドカーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
 
 
 
ルミカのヘリから、特大のレーザービームが打ち込まれる。
 
一瞬あたりが真っ白になったかと思うと、ものすごい衝撃波が広がった。
 
 
「わあああああああああああああああああ」
 
 
ピカーン
 
 
直撃したムサシとニャースは遥かかなたへ。
 
 
 
 
シュウウウウ・・・・・。
 
あたりはひどい荒地と化した。
 
 
 
「・・・おいっ・・あそこまですることないだろ!!」
 
「コジロウさま。」
 
「・・?」
 
「今後あの二人に近づくことは・・絶対に許しませんわよ。」
 
 
 
 
 
 
その表情にゾクッとした。
 
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