大事なもの

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「もうすぐだ・・・!皆・・頑張れよ・・!」
 
 
 
荒れ狂う突風の中、必死に島へと向うリザードン。
島は目前。しかし、その距離に反し全く速度は上がらない。
視界があまりに悪く、時々起こる落雷をうまく避けながら進むのは経験豊富なリザードンにもかなり難しかった。
 
 
「くそ・・・風が・・強すぎるっ・・。」
 
吹き飛ばされそうなのを必死にこらえ、リザードンにしがみつくサトシ。
そのリザードンもまた、辛そうな表情。
 
 
「ジャリボーイ!!!」
 
「な・・んだ?」
 
「俺たちはもうここでいい。ここからは自分達で何とかするから・・お前はもう帰るんだ!」
 
「!?」
 
 
ここまでたくさんお世話になったサトシ達。
敵とはいえ、これ以上迷惑をかけられない。
ここなら少し海をわたれば島へたどり着ける距離であるため、コジロウはそう決断した。
 
 
「そうニャ!これ以上いくとリザードンも危険だニャ!」
 
 
「・・・お前ら、船も何もないじゃないか!」
 
 
「うっ・・それは・・・」
 
 
「ムサシを救いたいんだろ?」
 
 
サトシは強気でほほえむと、リザードンと目を合わせる。
リザードンもまた、同じ目つきで口角を上げた。
 
 
リザードン、いけるよな・・・!
 
 
 
「よし!高速で、一気に島へ急降下するんだ!!」
 
 
 
サトシの指令の後、リザードンは猛スピードで島へダイブするように飛んだ。
 
 
 
 
 
 
「わああああああああああああああああああああああああ」
 
 
 
 
迫り来るサイクロンも、予測がつかない落雷も、すれすれの所でうまくかわす。
リザードンは少し辛そうだが、爽快な表情をしていた。
 
 
 
そして・・・・
ついにリザードンは島の域に突入する。
 
 
 
 
 
 
「どわあああああ」
 
 
 
 
 
ズドーン!!!!!
 
 
 
 
勢いのあまり、ニャース気球2号はそのまま地面に墜落した。
 
 
 
「いてててて・・・・・」
 
 
 
「わ・・悪い!つい勢いで・・・」
 
 
 
上空からジャリボーイの叫び声。
突風の中必死に漂うリザードン。
 
 
 
「いや、いいんだ!本当にありがとう!!!!!
 
 
感謝してる!!!!」
 
「ありがとニャあああ!!」
 
 
心の底から必死に叫ぶ二人。その声には、疑いようもない感謝の思いが込められていた。
 
 
「必ず、ムサシを助けろよ!」
 
「ガウっ」
 
 
年相応の、とびきりの笑顔で親指を立てるサトシ。
ふんっ、と可愛くないが温かみのある表情で一吼えするリザードン。
そんな敵であるジャリボーイ達は、島のはるか向こうへ消えていった。
 
 
 
「あいつら・・・本当にいい奴らだぜ・・・。」
 
「本当だニャ!!大人気アニメの主人公にはぴったりだニゃ・・。」
 
 
と、そんなことに感心している暇はない。
早くムサシを探し出さなければならなかった。
 
雪が降り積もる中、二人はムサシを捜し求めて走り出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
********************
 
 
 
 
 
 
 
 
その頃、ムサシはというと。
 
 
 
 
 
 
 
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・」
 
 
 
降り続ける雪の中、ムサシは必死にがけを登る。
着ている服は更にボロボロになったが、既に目的の卵のもとへたどり着く直前だった。
 
リングマ達の協力で、あまり目立たない洞窟から中央の卵の場所へ近づくことが出来た。
途中、他にも様々な人達を見かけたが、皆大勢だからかポケモン達に目をつけられ狙われていた。
伝説のポケモン3体に加え、野生のポケモン達は皆凶暴。
更に天候の悪さもすさまじく、まさに島内は地獄絵図だ。
 
 
卵は少しいった山の上にあった。
寒さが手の感覚を鈍らせるが、それも厭わずムサシは頂上を目指す。
 
 
絶対・・・・私は上へ行くんだ・・・!!
 
 
最初、自分自身に誓った夢。
信頼できる仲間を見つけ、今まで着々と進んできた道。
ピカチュウを狙った旅は失敗続きだったけど、それでもロケット団の星になるという思いはいつだって自分を前進させてきた。
夢は・・・叶えなきゃ。自分を認めてもらうためにも!!
 
そして・・その片手は頂上へと届く。
 
 
「はぁ・・はぁ・・・よし」
 
やっとの思いで駆け上がった上には、確かに不思議な輝きを持つ卵があった。
 
 
「これが・・例の・・。」
 
 
 
 
 
 
”やっぱり、やってみなきゃ分からないじゃない!!”
 
 
 
 
 
ムサシの心は確信した。自分でもできるという確信を。
あふれ出そうな喜びを抑え、卵を持ち上げた。
 
 
 
 
 
その時。
 
 
 
 
 
 
 
「グマっ・・・・・!!!!」
 
 
 
「!!?」
 
 
 
リングマの様子がおかしい。
今まで自分を助け、ここまで導いてくれたリングマが苦しそうにうずくまった。
 
 
「ど・・どうしたのよ・・?」
 
 
 
「・・・ガルルル・・」
 
 
顔を上げたリングマは、もう先ほどの穏やかな彼ではなかった。
 
 
「!?」
 
 
すさまじい勢いの破壊光線が炸裂する。
慌ててよけたものの、後方の山は貫通しぼろぼろと崩れ落ちた。
 
「な・・何するのよいきなり!!」
 
 
 
しかし、ムサシの声は届かない。
 
リングマはムサシめがけ、猛攻撃を開始する。
 
 
 
 
「くっ・・・まずいわ・・・・。」
 
 
見ると側にいたヒメグマも心配そうにリングマを見つめていた。
しかし、リングマには標的のムサシ以外見えていない様子。
 
小さなヒメグマも一緒に抱え、突発的に山から飛び降りる。
 
飛び込んだ先は雪の中だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ズボッッ
 
 
 
 
「・・・はぁ・・助かった。」
 
 
雪が深く、幸いダメージはほとんどない。
 
 
「もしかして、この卵を盗んだから・・?
だとしても、ここまで来たんだから。譲るわけにはいかないわ!」
 
 
卵を抱えると、ヒメグマを肩に乗せ、雪を掻き分けながらすすむ。
 
 
「はぁ・・・はぁ・・・」
 
 
だめだ、うまく進めない・・・。
そろそろ体力が限界か・・。
 
 
疲れきって、息があがる。
気持ちは進むのに、足をとられうまく進めない。
ヒメグマは心配そうにムサシを見つめる。
 
「ヒメ・・・」
 
 
「は・・大丈夫よ・・。
 
もうすぐ・・もうすぐなんだ。」
 
 
これを持って、あいつらのところに帰るの。
私たちの可能性はゼロじゃないってこと、証明してやるわ。
 
 
 
 
 
その時。
 
 
 
 
 
バリバリバリバリ!!!!!
 
 
 
すさまじい音とともに、激しい雷撃がムサシを吹き飛ばす。
 
はるか上空からの、サンダーのかみなりだった。
 
 
 
 
 
「きゃああああああああああああ」
 
 
 
 
ムサシは深い谷へと転がっていった――。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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